彼は私の全てだった
真実
久しぶりに会った父は少し小さくなったように感じた。

頼もしかった父もパジャマ姿で病院のベッドの上に居るとその威厳が失って見えた。

「大丈夫?」

「何だ?急にどうした?仕事は?
まさか俺のせいで休んだのか?

大したこと無いのに…お母さんが余計なこと言ったのか?」

「違うよ。働いてばっかりだから有給もらったの。

別にお父さんが入院したからじゃないよ。

それより腰はどうなの?」

「手術したから随分楽になるさ。」

「あんまり無理しないで。」

なんとなく父と2人きりだと照れくさくて
こんなに話したのは久しぶりだった。

「ミチル、来てたの?」

母が病室に来て、空気が変わった。

私はなぜかホッとしていた。

父のことはとても好きだけど
2人きりになると何を話していいかよくわからない。

「ミチル…仕事そんなに忙しいの?

たまには顔見せてよ。

お父さんだってずっと心配してたんだから。

お正月にもお盆にも帰れないじゃない?」

「そういう仕事なの!

お盆もお正月もお店は年中無休なんだから。」

こんな何気ない会話に幸せを感じた。

やはり実家はホッと出来て
母のご飯は美味しかった。

一緒に暮らしてる時は気がつかなかったことだった。

その時、ちょうど地元の友達から電話がかかってきた。

「ミチル?元気?

ね、今日の同窓会来ないんだよね?

ミチルから返事がなくて…一応確認しようと思ったんだけど…」

「え?同窓会?

今ちょうどこっちに帰ってきてるんだけど…」

「ハガキ見てない?」

「え?ハガキ?」

私の会話を聞いていた母が急に立ち上がった。

「そういえば…中学の時の同窓会のハガキが来てたわよ。」

母が引き出しの中から一枚のハガキを出した。

「行かないと思って連絡しなかったけど…ちょうどよかった。

これのことじゃない?」

確かに今夜、近くのカラオケルームを貸し切って
同窓会があるとの内容のハガキだった。

「ごめん、ハガキ…来てたの母が忘れてたみたい。」

「ね、せっかく帰ってきたんなら顔だしてよ。
思ったより人数集まらなくて…」

私はなんとなく昔に戻りたくてその同窓会に参加することにした。

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