ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)

お盆明け

 お盆明け翌週の月曜日。

20人の実験のデータ整理がようやく終わり、一息ついて外を見た時には窓の外はすっかり夜の闇に包まれていた。

時計はもう10時になろうとしてる。

(…ミライ戻ってこないな)

盆過ぎには、って確かにそう言ってたよな。

でも所長からの連絡は何もない。

(何か手間取ってるのかな?)

なぁんにも連絡がないと余計に気になってしまうよ。

「やっと帰れるぅ~」

片付け終えた広海君が、フッと振り向いて寄って来た。

「ね~ぇセンセー、挨拶のキスってどんな風にしてるの?」

え?

突然何だよ。

「ここで私にしてみせて」

えっ?

「ここで???」

ナニ言い出すんだよ。

「いいじゃない。挨拶代わりなんでしょ」

椅子ごと向き直って顔を突き出して、まじまじと見つめてくる広海君。

「…」

ま、無理に断る事もないか。

チュッと軽く一回。

「…それで終わり?」

小首を傾げて微笑む広海君。

「だって、挨拶代わりだろ?」

たまにはちょっと、からかってやろう。

「もうもう、イジワル」

と広海君がチュッと可愛くキスをし返して、そのまま目の前すぐでニコニコッと見つめてきた。

まさか、彼女とここでイチャつく事になるとはね。

「早く帰りましょ♪」

と、彼女が腕を取ってきたその時、

携帯がプルルルッと鳴り出した。
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