ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)

三人で研究所

 研究所に着くと真っ直ぐ控え室に通された。

ガラス壁で仕切られた研究室の中には既に二号機の姿は無く、研究員たちの姿もない。

どこにいったんだろう。

まるでモヌケの殻だよ。

「スゴイ装置ばっかりね。それに天井も高くて広いし」

ガラスに手と顔をくっ付けて物珍しそうに研究室を見渡す広海君。

「我が研究室へようこそ。ゆっくりしてってよ。はいこれコーヒー。インスタントだけどね」

相変わらずのインスタントを手渡して椅子に腰掛ける所長。

「あの、ここっていつもこんなに静かなんですか?」

広海君がカップを持ったまま尋ねた。

確かに今日の静けさは気になるよな。

「いやいや、研究が一区切りついたから、今みんな夏休みを取ってるんだ。このところ働き詰めだったから長めにね」

手を左右に長ーく開いてみせる所長。

(なるほどそれでか)

どうやらそれは本当っぽい。

「ねぇ、ミライさんはここで何してたの?」

振り向いて問い掛けた広海君に、ミライが笑顔で返した。

「私はプログラムとデータ処理ばっかり。今とあまり変わらないかも」

と実験室から持ってきたDVD-ROMを取り出して見せるミライ。

「あ、悪いけどそれ電算室に持っていってよ。本田君が待ってるからさ」

カップを持った手で指し示す所長。

「はい所長」

素直に立ち上がるミライ。

と、広海君がパッと腰を浮かした。

「私も一緒にいい?」

えっ?!

「うん。こっち」

ええっ?!

あっという間にミライが広海君を引き連れて出て行く。

こっちから声を掛ける暇もない。

いいのか?
< 167 / 321 >

この作品をシェア

pagetop