ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)

始まった前期

 月曜日の朝。

前期の授業が始まり、学内には初々しい賑わいが溢れてる。

(さ~て、今日からが勝負だ)

さあ来い広海君!

(…にしても、遅いな)

いつも通りに実験室で準備を整えて、始業のチャイムが鳴ろうかという時。

カチャッと静かに扉が開いて、現れたのは、…

来た!広海君だっ!

「おはようございまーす…」

ん?

声のトーンがいつもより低い。

この前の勢いがウソのよう。

語尾もちょっとナゲヤリで、いつもは振り返ってバタンと閉める扉も今日は閉まるに任せたまま。

(これは何かあったナ)

この一年でだいぶ彼女の事はわかってきたつもり。

こういう時は2パターンある。

構って欲しいか近寄らないで欲しいか。

見極めるポイントは顎の位置。

見た目でわずかな上下の違いを見抜かないと。

「おはようございますミライさん」

下がってる。

これは構ってやらないとスネてしまうゾ。

「おはよう!いやぁ良かった。先週来てくれなかったからさ、早く広海君の顔を見たいな~って思って待ってたんだよ」

ひとつおだてて立ち上がる。

フ~ッ。

助手をやってくのも大変だよ。

演技の一つも出来ないとイケナイんだから。

「広海さん、おはようございます♪」

察してくれたのか、ミライが今までにも増して笑顔で挨拶してる。

「おはようございマス」

と、パッと広海君の顔に笑みが戻った。
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