【短編小説】高校生昇華物語
「よお、チビ」

「五月蝿えぞ、巨人」

「またこの街に来ていたのか」

「ああ、九州から遥々、な」

「相沢が成人した後、またこの街に来たのは何故だ?」

「別に、大した理由なんてねえよ。この街、俺の出身地だしな」

「それは初耳だったな。はじめて知った。今日一びっくりしたかもしれない。」

「今のお前の顔はそんな顔でもねえがな」

「そうか、私は顔に感情があまり顔に出ない質でね。その点、君も一緒なんじゃないかな? 餡蜜を真顔で食べているあたり」

「好きでもねえからな、ただ、気分的に餡蜜だっただけだ」

「そうだったのかい。君はどうにもよくわからない人間だな」

「俺から見たらあんたの方が不思議な人間だけれどな、なんでそんないつもにこにこ笑ってやがるのかな。何が可笑しいんだか」

「何も可笑しくないよ。これは営業スマイルっていうんだ。職業柄でね、もうこれが普通の顔。」

「へえ? 今のお前の職業ってなんだよ?」

「メイド喫茶のメイドさん」

「なんで男の癖にメイド喫茶でメイドなんかやってやがる」

「知らないよ。原宿駅付近を歩いてたら喫茶店店長にスカウトされたんだ」

「じゃあその店長の趣味が悪いのか」

「…言えてる」

「俺はこの街出身だが、この街が大っ嫌いなんだよな」

「私は好きなんだけれどな」

「そうなのか、お前にも好きとかそういう感情があるんだな。俺はそのことに今日一びっくりしたぜ」

「失礼な。私はシルバニアファミリーが大好きだよ」

「頭の中お花畑なお前らしい回答だな」

「酷い言われようだな。相沢ちゃんにもそういう扱いだったのかい? 話によれば君、相沢ちゃんと同居したそうじゃないか」

「ああ、そんなこともあったな。女と同居なんてし過ぎてよくわからなくなってきたがな」

「それはモテ自慢かい? 式錢くん。そうだよね、式錢くんモテるもんね」

「別に、自慢じゃねえよ。」

「まあ、私も女の子と同居なんて何回もしたよ。お泊まり会感覚でね。それで襲ったりなんかしたらレズビアンと間違われるし、普通に家にあげて泊めてあげるだけだけれど」

「そうか、お前も色々あるんだな。まずお前はその長ったらしい髪を切ったらどうなんだ。大部分はその髪で間違われていると思うんだが」

「うーん、髪は切ると落ち着かないんだよね。なんか」

「へえ、そんなもんかな」

「そんなもんだよ」
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