淡麗なうわずみ
冷静なうわずみ
オレンジ色のでっかい月が、くっきりと濃い闇の空に浮かんでいる。

「じゃあね、古賀さん。気をつけて帰りなね」

九条くんは言って手を上げる。

バイバイって振るんじゃなくて、手を上げる。

何となく、この仕草、好きだ。

あたしは、手を振って返す。

バイト帰り。

あたしは、自分の帰る方へ向き直って歩き出す。

でも、月につられて足を止めた。

でっかい月。

「どうしたの?」

すぐ後ろで声がした。

九条くん。






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