天国への橋
「お母さんの言う事をよく聞いて、いい子にするんだぞ?」





俺を見つめる親父の瞳は、潤んでいた。



あの、虹を見上げていた時と同じ、悲しそうな瞳。








俺を、瞬きもせずに見つめる親父。


まるで……瞳に、記憶に、俺を焼き付けているかの様に。








やがて、無理に引き攣った笑みを作って見せた親父は、ゆっくりと立ち上がった。



離れていく、親父の大きな手。








「父ちゃん?」







俺の呼び掛けにも応えぬまま、玄関へと歩いて行く親父。



俺は、その大きな背を見つめた。








どこに行くの?

いつ帰って来るの?


母ちゃんが泣いてるのに、どこに行くの?



抱っこしてくれないの?

一緒に眠ってくれないの?





「父ちゃん?ねぇ、父ちゃん」










どうして振り向いてくれないの?


呼んでるのに。







ねぇ……父ちゃん。



父ちゃん。






父ちゃん……父ちゃん………。








「父ちゃん!!」







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