たまゆらなる僕らの想いを


そうして、コートを羽織ってショルダーバッグを肩にかけ、ヒロから借りている自転車の鍵を手にするとみなか屋を出発。

昨夜まで降っていた雨の影響で、コンクリートはまだところどころ色を濃くしている。

空を見上げれば今朝まで分厚く覆っていた雲は太陽に譲るように晴れ間を覗かせ、天へ招く光の梯子を作っていた。

ふと、ナギのことを考える。

私はここ二日、御霊還りの社には行っていない。

ナギが家族に想いを馳せにやってきているなら、邪魔をしてはいけないと思ったからだ。

ナギからメッセージが送られてくることもなく、あまりしつこくしたくないので、私からも送っていない。

どうしているのか気になるし、会いたいけれど。

ぐっと堪えて私は足に力をこめた。

天神商店街へと続く緩やかな坂道を、自転車に跨って登っていくと、木々の間から予渼ノ島の海が見える。

白波をかき分けてゆっくり進む漁船を横目にペダルを漕ぎ、民家や田畑をいくつか通り過ぎたところで商店街に到着。

昨夜、夕食を運んできてくれた際に女将さんに尋ねたところ、商店街のほとんどのお店が明日まで営業していて、元旦は休み、二日はお店によって夕方近くまで開けているそうだ。

ひとまず自分の目的であるリップクリームやポケットティッシュ等を買いに薬局へ。

その後、女将さんに頼まれた日本酒を手に入れるべく、ヒロの家である【あだち酒販】に向かう。


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