たまゆらなる僕らの想いを


初詣に行くなら、ナギのお見舞いに行った方がいいのではと気後れしていれば、女将さんは熱々のお茶が入った湯飲みを座卓に置いた。


「気分転換にもなるかもしれないし、困りごとがあるなら、神様に頼んでみるのもいいかもしれないよ」


神様に、か……。

……玉響物語のアメノヨモツトジノカミなら、ナギを助けてくれるだろうか。

私は巫女でもないし、特別な力を持っているわけではないけれど、少しでも可能性があるのなら。

凹んでいたって状況が変わるわけではないし、初詣のあと、試しに御霊還りの社でお願いをしてみよう。


「じゃあ、ご一緒させてください」

「良かった! ありがとう」


嬉しそうな笑顔を浮かべ立ち上がる女将さんは、部屋を出て行こうとして入り口の前でこちらを振り返った。


「凛ちゃん、着物もさ、着てみない?」

「え? 着物、ですか?」

「私が若い頃に着てたやつが残っててね。ほら、うちは息子二人だろ? このままお蔵入りになるのも悲しいし、良かったら使ってよ」


身長も同じくらいだし、昔はこれでも細かったからサイズは丁度いいはずと笑った女将さんはさらに言葉を続ける。


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