たまゆらなる僕らの想いを


……頑張らなくても、いいのだろうか。

私はいつも母に言われていた。


「お母さんは、もう少し頑張れば世界が広がるって」


途中で諦めては成果は出ない。

怖がってばかりじゃ進めない。

進んだ先には素晴らしい世界が待っているのかもしれないのに、と。

私が母に言われたことを伝えると、ナギはウンウンと首を縦に振る。


「そうかもな。でも、疲れた人にもっと走れ、なんてひどくないか?」


言われて、私は確かにそうだと納得した。

疲れたなら休むのが普通だろう。

だから私が「そうだよね」と答えると、ナギは「そうだろ?」と笑みを浮かべて。

「ただ、凛が望むなら話は別」と、私の目を真っ直ぐに見つめる。


「少しでも悩んでいて、少しでも変わりたいと思ってるなら、たまには勇気を出してみるのもいいんじゃないか? それでもし傷つくことがあったら俺が癒してやる」


それなら、怖さも乗り越えられそうだろと提案され、心が前を向くのを感じて。

少し強い風が通り、乱れる髪を押さえながら私はゆっくりとひとつ、頷いた。


「努力、してみる」


支えてくれる人がいる。

そのことを心強く思いながら、私は続けて唇を動かす。


「それに、今、仲良くなりたい子がいるから、まずはそこからかな」

脳裏に自分と同じ人見知りの八雲君の姿を思い浮かべて、スタート地点となる彼との交流方法を模索しないとと背筋を伸ばした。



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