熟恋ージュクコイー
「ねぇ、その人はさぁ、何してる人?」

カンナが口を開いた。

『小さな旅行会社をやっていてね、留学の斡旋もしているの。
年はお母さんと同じくらい。田中さんっていう人よ』

「ふぅん…。あの、私さ、お母さんに好きな人がいるのって、いい事なんじゃないかなと思う」

カンナが話し始めた。

「彼氏が出来てから、私、毎日同じ生活なのに、楽しくなったように感じるの。
張りが出るっていうか…
お母さん、お父さんが亡くなってから、お父さんの分まで頑張ってきた事、私もお兄ちゃんも見てるし、そのお母さんが幸せな気持ちになるんだったら、反対しないよ?」

『ありがとう、かんちゃん』

「あ!でもDVとかモラハラとか、そんな奴だったら許さないよ!お母さんが泣くのは許さない!」

『うん、ありがとう。』

涙が出てきた。

いつのまに、こんなに大きくなったのか…

「その人にさぁ、会える?」

大輝が言った。

「お母さんにはいいとこ見せてたら?本当はどうたかわからないじゃん」

ひどい言い方ではあるが、大輝は私を心配してくれている。

『うん、いつでも会えるよ。明日時間ある?会ってみる?』

「明日、昼なら会えるよ〜!夜はデートなの♡」

カンナが言う。

「俺も昼なら大丈夫。会ってみたい」

大輝も言った。

『わかった。今から連絡してみるね。
ミキのお店にでも一緒に行こうか?
お昼ごはん食べに。』

「いいねぇ〜ミキちゃんにもお披露目!」

「おい、カンナ。まだわからないって。」

「はいはーい。あぁお兄ちゃんは怖いなぁ〜。
金髪彼女がいるくせに。」

『え?彼女いるの?』

大輝は恥ずかしそうに言う。

「あ、あぁ、まぁいるよ。来年あたり、一緒に日本に来たいと思ってる」

『えー!!早く言ってよ!会いたいわよ!』

びっくりだ。
彼女がいるなんて!

それにしても、私もすぐに大輝の彼女に会いたくなった。
雅也さんに、早めに会ってもらった方が良さそうだ。
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