次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい


「今日は、どこに行こうか」


とは言え、目的地はまだ決めていないらしい。

しかもこうして連日のように、オルキスがリリアを連れて歩き、城のあちこちを見て回っているため、リリアも少しずつジャンベル城内に詳しくなり始めているところである。


「そうだ……セドマの様子でも見に行くか」

「お父さんの所に!? 行きたいです! ぜひ連れて行って下さい!」

瞳を輝かせ満面の笑みで答えたリリアにほんの一瞬目を奪われたあと、オルキスも「うん」とはにかんだような顔で返事をする。

リリアが新たな一歩を踏み出しているように、セドマもまた団長の補佐役として騎士団の仕事に携わり始めている。

その上、今リリアが寝室として使っている部屋は、以前使用した客間ではなく、オルキスの部屋の中にある一室ということもあり、セドマの姿を見かけることじたい少なくなってしまったのだ。

もちろんオルキスや、時折顔を見せるアレフからセドマの話は聞いていたため、すぐ傍で元気でやっていることは知っていたのだが、やはり唯一の肉親である父親の元気な姿は、口伝ではなく自分の目で確認したいと思ってしまう。

オルキスを先頭に庭に出て、そして他愛ない言葉と笑みを交わしながら城の西側に位置する騎士団の詰所へと進んでいく。

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