次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい

不意に、重なり合ったあの時の柔らかで温かな感触が自分の唇にも蘇ってきたような気がして、リリアは小さく体を震わせたのち、はにかんだような笑みを浮かべて頷き返した。


「良い子だ」


オルキスはリリアの髪に口づけを落としたのち、セドマへと身体を向ける。


「俺はリリアをモルセンヌに連れて帰りたい……そう言ったら、どうする?」


挑戦的とも取られかねない言い方をしたオルキスと、それを渋面で受け止めたセドマを交互に見つめながら、リリアは鼓動を高鳴らせていく。


「止めるか?」


続けて発せられたオルキスの問いに、セドマはほんの数秒瞳を閉じた。そして肩の力を抜いた後、言葉を返す。


「あなた様が本気で望んでいるのなら、俺に止めることはできないだろう」


きっと父なら自分のモルセンヌ行きを止めるだろうと考えていたリリアは、予想外の返事がされたことに驚き目を見開いた。

リリアはオルキスと目と目を合わせてから、高まる感情を抑えきれないままに、セドマへと問いかける。


「そ、それってつまり……オルキスと一緒なら、モルセンヌに行くことを許してもらえるってこと?」



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