次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい

目鼻立ちのはっきりした整った顔立ちは息子のオルキス同様麗しくもあるが、年齢を重ね渋みが増したため貫禄も十分で、黙って見つめられれば、相手は簡単に萎縮してしまうことだろう。

その身に纏う滑らかで光沢のある生地を用いた深い赤色のマントは、金糸の刺繍が施されていることで豪華さが増し、リリアはついつい目を奪われ魅入ってしまう。

しかし、セドマとアレフがほぼ同時にその場に片膝をつき、頭を垂れたことに気付き、慌ててリリアも床に両ひざをつき、手を胸の前で組み、頭を下げた。


「お見苦しいところを、失礼いたしました」

「オルキス、お前帰って来ていたのか。セドマに会いに行ったと聞いたが……会えたか? 元気でおったか?」

「セドマならそこに」


オルキスの言葉と共に、衣擦れの音を立ててセドマが顔を上げる。


「王様、大変ご無沙汰しておりました。セドマです」


人が近付くのを拒むように厳しい表情を浮かべていたアシュヴィ王だったが、足元に控えていたセドマに視線を落とした瞬間、眼尻を下げてとても嬉しそうに笑った。


「おおっ! セドマ! 会いたかったぞ!」


つい顔を上げ、その様子を見つめていたリリアへと、アシュヴィ王は何気ない様子で視線を移動し、息をのんだ。


「……そこにいるのは、私の娘でございます」

「セドマの、娘?」


セドマへと視線を戻したアシュヴィ王が、明らかな動揺を見せながら再び自分を見たことで、リリアは訳も分からぬまま、床に額がつくほどに勢いよく顔を伏せたのだった。





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