惚れ薬
両手が塞がった状態なのでチャイムを鳴らすのもめんどくさい。


あたしはチッと軽く舌打ちをして、一旦荷物を足元へ置いた。


チャイムを鳴らし、誰かが出て来るのを待つ。


しかし、いくら待ってみても誰も出て来る気配がない。


部屋の電気はついているし、車も車庫に停まっている。


絶対に両親のどちらかが家にいるはずだ。


「ちょっと、帰ったんだけど!?」


あたしは怒鳴り声を上げてそう言った。


いつまで待たせるつもりなんだろう。


イライラしながらそう思っていると、玄関へ近づいてくる足音が聞こえて来た。


「早く開けてよ!」


あたしがそう言うより先に、足音が途中で止まった。
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