惚れ薬
《とにかく航のことは頑張りなよ。1年生の頃に比べたら随分仲よくなれたんだから!》


そう言われて、あたしは航を好きになった時のことを思い出していた。


あれは入学式の日だった。


高校生活第1日目の、放課後のこと。


配られた教科書を鞄にパンパンに詰め込んで階段を下りていた時、後ろから走って来た男子生徒にぶつかられて、危うく階段から落ちてしまいそうになったのだ。


その時偶然近くにいた航が手を伸ばして助けてくれたんだ。


『大丈夫?』


そう言って笑いかけてくれるなんて、まるで少女漫画の中の様だった。
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