あしたの星を待っている
声の主の方に顔を向けると、むすっとした表情。
目の前でヒラヒラさせる白い紙を七海が受け取り、小首をかしげた。
「何? 矢吹くん」
「これ小論文の未提出者の名前を書くやつ。記入したら他の奴に回せって」
「ありがとう」
さっき先生が言っていたやつか、私も名前を書かなくちゃ。
教室のドアから出ていく後ろ姿をぼんやり眺めていると、七海が人差し指で机を軽く叩いた。ナイショ話をするみたいに、顔を近づける。
「矢吹くんと花菜って幼馴染だよね?」
「うん、そうだよ」
「その割に話したりしないよね。仲良くないの?」
「うーん」
「ってかさ、矢吹くんって雰囲気変わったよね」
七海との間に、真紀子ちゃんが入ってきた。
「そうなの?」
「うん、昔はもっと明るくて元気な男の子って感じだったよ? 私、中学は別だったけど小学校は同じでさ、高校で再会して別人かと思ったもん」
へぇ……と七海が驚いたように目を丸くする。
高校から同じになった彼女にしてみれば、想像できないらしい。
「中学の時に何かあったとか? 花菜、知ってる?」
「さぁ、付き合う友達の影響じゃないかな」
「あ~確かに。一緒にいる蒔田(まきた)くんとかよく補導されてるもんね」
「なるほど、悪い影響は受けたってわけだ」
もう1度ドアの方に視線をやる。
すると、タイミングを計ったように彼が教室に戻ってくるところだった。