あしたの星を待っている


メニューを読み上げていたお母さんが、急に「いけない」と手を叩いた。どうやら料理に合うお皿が用意できてなかったらしい。

また始まった、お母さんの完璧主義。

でも今日は瑠偉くんもいるんだし、適当なお皿でいいんじゃないかな? 

そう言うより先に、


「ちょっと探してくるから」


と、お母さんはキッチンから出て行った。


「ごめんね、なんか」


瑠偉くんと2人、部屋に残され気まずさから変な焦りがでる。

冷蔵庫から出した麦茶をグラスに注いで、テーブルに置くと、こちらもまた気まずそうに視線を逸らした彼が「別に」と呟いた。


「そうだ。お土産ありがとうね。おばさんにも言っといて」

「ああ」

「私、これ好きなんだー。京都のおたべ。出張って大変そうだけど、あっちこち行けるのはいいね。うちのお父さんなんて接待ゴルフは行くけど、お土産なしだよ」

「……」


もう、何か言ってよ。

お茶を入れたら他にすることがなくて、くだらない話でもしてないと場が持ちそうにない。かといって気の利いた話は浮かばない。

昔は会話に困ることなんてなかったのになぁ。

ちょっとしたことで笑えて、ちょっとしたことで言い合えた。

そういや、もうどれくらい瑠偉くんの笑顔を見ていないだろう。




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