あしたの星を待っている


『大事に至らないそうよ』

『そっか、心配かけてごめんね』

『何、言ってるの。花菜が無事でよかった』


――本当に、無事?

お母さん、私、汚れてない?







「今日も部活? 夏休みなのに頑張るわね」

「新体制になったから、しばらくは頑張らないと」


合宿のあと、3年生は引退した。

そして新しい部長には、七海が選ばれた。適任だと思う。

責任感が強いし、いつもチームメイトのことを優先して考えてくれるし、率先力もある。そして何より私たち2年の中では、ずば抜けて上手い。

エース兼、部長。

きっと葉山先輩と同じタイプの部長になるだろうなぁ。



……葉山先輩。

お祭りの日、過去のトラウマを打ち明けた私に、先輩が呟いた言葉の意味は何だったのだろう。結局、聞けずに帰ってしまった。

先輩はあの時、何を思っていたのだろう。


「あ、電話」


朝ごはんを食べ終えて、制服に着替えよう立ち上がったとき、家の電話が鳴った。

うちの電話は登録してある番号から掛かってくると、その名前を読み上げてくれる機能がある。何も言わないときは、ほぼセールスだ。

お母さんはキッチンで忙しそうだし、私が出よう。

と手を伸ばした瞬間、お母さんに受話器を奪われた。


「もしもし、夕里ですが」


びっくりしたぁ。

お母さんが対応しながら、ジャスチャーで2階に行きなさいと合図する。

何よ、人がせっかく……。

そう思いながらリビングを出て、階段を登ろうとしたところで、


「いい加減にしてください、迷惑です!」


お母さんの怒鳴り声が聞こえた。




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