あしたの星を待っている
「なにするの!」
「必要ないでしょ、こんなもの。今度この人が訪ねて来ても口をきいちゃだめよ」
「どうして? 理由は、教えてくれないの?」
いつまで、事故だと言い張るんだろう。
いつになったら、本当のことを教えてくれるのだろう。
私が傷つくから?
確かにそうかもしれない。
でも、それはお母さんも同じだよね。
本当は自分が傷つきたくないだけなんじゃないの?
結局、お母さんは私の質問に答えてくれず、もうこの話をしないでちょうだい、と自室に入ってしまった。
名刺はビリビリに破られ、リビングのゴミ箱に捨てられていた。
あの人、山岡さんだっけ。
また同じ事件が起きたって言ってた。
それって、瀬戸高の近くで女子高生が襲われたってやつかな。
それで私のところに話を聞きに来たというなら、同一犯の可能性があるのかな。
犯人は……。
「ん?」
コツ、と何かが窓ガラスに当たる音がした。
気のせいかな。
2階にある自分の部屋のベッドの上で寝転んでいた私はカーテンを開けるのが面倒で、単なる聞き間違いか、それとも虫か何かだろうと寝返りを打つ。
だけど、窓に当たる音は確実に大きくなり、無視できる状況ではなさそうだ。
まさか、さっきの記者?
さすがにそれはないか、幽霊だったらどうしよう。
机の上にあった30センチ定規を手に取り、勇気を振り絞ってカーテンをゆっくり捲ると、そこには知った顔があった。