幼なじみとの恋は波乱で。(仮)
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From : 奏
Sub :
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ごめん、先帰っといて
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奏から届いた、一通の短いメール。


今日は、水曜日。


----なぜか、胸騒ぎがした。


たぶん。


たぶんだけど、

これは、柏田先輩が関係している。


あてにならない私の勘だけど、

なぜだかそう思えてならない。



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To : 奏
Sub : Re :
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そっか。わかった。
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私も、奏に短いメールを送り返す。


私は、カバンを持って、教室を出た。



今日は、先生に呼ばれているため、

放課後職員室に寄らなければならない。


私は、階段を使い、2階まで降りる。


そして、1階へと続く階段を

降りようとした、その時。


「…ごめんなさい」


その声を聞いて、私は思わず息を呑む。


聞き覚えのある声。


この声は…。


(柏田先輩…?)


階段の近くにある柱から、

その声の主を確認する。


声の主は………柏田先輩だった。


そして、その前には…。


(奏…?)


「ごめん、って……。本当なの?」

「………」


奏の言葉に、柏田先輩は黙り込む。


「……本当、なの…?」


奏も、そんな柏田先輩の行動を見て、

焦りを感じたのか、もう一度尋ねた。


「信じてくれないかもしれないけどっ……。

あれは、告白されて、断ったらされたの。

だからっ………」


そこまで言うと、柏田先輩は再び黙り込んだ。


「…そう、なんだ……」

「………」


ズズズッと、鼻をすする音が聞こえる。


今、たぶん、柏田先輩は泣いている。


「………別に、いいよ」

「…え?許して…、くれるの?」

「許す、っていうか……。

もし、夕夏が、その先輩のこと好きなら…。

別に、俺と別れて付き合ってもいいよ」

「え…?」


その言葉は、奏に似合わない……

いや、昔の奏のような、

冷たく、残酷な言葉だった。


「ちがっ…、私は………奏が好きだよっ…?」


柏田先輩の瞳からは、

未だに涙が流れ続けている。


「ほんとに?」

「ほん、とっ……。

奏のためなら、なんでもできるよっ…」

「ほんとに?」

「っ……」


奏の言葉は、柏田先輩に、深く突き刺さる。


「……うん。キスだってする」

「ほんとに?じゃあ、してよ」


…え……?


キス…?


今から2人は、キスするの…?


そんなことを考えている間にも、

2人の距離はどんどん近づいていく。


そして、鼻と鼻が触れ合うぐらいの時。


私は耐えられずに走り出した。



----チリンッ………。


私のカバンについていた鈴が

取れて落ちたけれど、

そんなことには目もくれず、

私は一目散に走った。


彼に、追いつかれないように。


私は足を前に出し続けた。
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