愛は、つらぬく主義につき。

　ふわふわ溶き玉子の雑炊と、牛肉のしぐれ煮が乗った大根サラダ、それと瑤子ママお手製の、あたしが大好きな杏仁豆腐が丸いテーブルの上に並び。

「ゆっくり食いな」

　斜め向かいに胡坐をかいた哲っちゃんの優しい眼差しに見守られて。
　あたしはれんげを手に「いただきます」の感謝を言って、熱々の雑炊を口に運んだ。

「･･････ん。･･･おいしい、すごく」

　薄味だけどお出汁が効いてて、柔らかくてあったかい･･････。
　ああなんか。
　食べたものに味を感じるのが、とても久しぶりな気がする。

　お腹は空くんだけど食べたくなくて。榊が強制的に買って来るサンドウィッチやプリンを仕方なく、ただの作業のように咀嚼して飲み込んで。余っても捨てるワケにも行かないから、お昼のお弁当代わりにしたりしてた。
　どれを食べても味なんかしなかったし、会社でお茶やコーヒーを入れても温度も感じなくなってた。

　なんの魔法だろう･･･。
　じんわり染み込んでく温かさに、凍り付いてた躰の芯が少しずつ熔けてくよう。

「そうかい。･･･良かったよ」

　大好きなもう一人の“お父さん”の深い愛情が伝わってきて。張ってた糸がぷつり、解けた。
　目頭が熱くなって湯気の所為にしたかったけど、こみ上げた涙がポロポロ零れ落ちてた。
　黙ってあたしの隣りに来た哲っちゃんは、頭を撫でながらハンカチを差し出す。

「冷めねぇ内にしっかり食って･･･話はそれからだ。･･･な、お嬢」