毒舌社長は甘い秘密を隠す

 私の返事を聞いた彼は、満足げに微笑みながらハイバックチェアから立ち上がった。


「優羽」
「っ……。会社でその呼び方はやめるというルールも飲んでいただけるのでしたら、社長の条件に従います」
「俺に意見するな」

 身勝手な社長が、デスクの前に立っていた私の隣にやってきた。


「連休最終日の夜、俺の自宅に来なさい。それまでは自由にしていていい」
「かしこまりました」

 ……って、本当にこれでいいの?
 でも、そうしないと専務秘書として働くことになる。


「っ!!」
「その日までの分、先に癒されておく」

 社長が突然私を抱きしめ、耳元で呟いた。


「あ、あのっ」
「黙ってろ」
「私、今部屋着を着ていませんが」

 なので、抱き心地もよくないはず。社長が求めている癒しは、アルパくんたちのような〝もふもふ感〟ありきなのだから。


「細かいことは気にするな」
「えっ」

 適当な答えを返した彼は、それから十分後に社長室のドアがノックされるまで、私をギュッと抱きしめていた。

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