毒舌社長は甘い秘密を隠す

 頭からシャワーを浴びて、ぼんやりと考える。

 俺が帰ってこいと言えば、帰ってくると言ってくれた。だけど、それは仕事上の関係があるから。
 今夜、もし本当に九条さんと会っていたら、それでも帰ってきてくれたのか?


「どうしたら俺を好きになるんだよ……」

 実際のところ、きっかけはなんでもよかった。
 とはいえ、常識的に考えれば、社長と秘書がそれ以上の関係なんて望んではいけない。
 ダメだと思えば思うほど、想いは止められなくなった。

 そして、とうとう抑えられなくなってきた春の夜、アルパたちに囲まれて横になっていたところを見られてしまったのを逆手に取った。

 今さら、強引に囲われているだけだなんて知ったら彼女は怒るだろうなぁ。


 ――『今は社長のご指示でこちらで生活していますから』

 俺といたいんだって、言ってくれるかと思ったんだけど。


「……そうはいかないか」

 望んでいた答えを思い浮かべ、シャワーの音にひとりごとがかき消された。

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