桔梗の華 ~途中公開~

柏埜山~埜鶴子~



「此処が柏埜山の入口か…」

白い霧が進むにつれて濃くなっていく
不思議な山、心が安らぐ様な。

「うぅ、オイラ気持ち悪いぞ…」

霧が濃いほど帆の具合が悪化していく
きっと妖気を浄化する霧なのかもしれない
このまま帆と神威も一緒行ったら危険だ、


「帆くん、残念だけど近くの村で神威とお留守番しててくれる?」

具合悪そうに小さく頷く帆を抱き上げ
神威に渡す。
さっきから神威の様子もおかしかった。
きっと、きついんだと思う

「俺は行く!」

帆を蘭丸に投げて見事にキャッチする
おぉ〜なんて思ってる場合じゃなかった

「駄目よ!こんな辛そうなのに!」

「うるせ!俺は平気だ!」

心配する私の目の前をズカズカと歩く
でもさっきから神威の身体はビリビリと
霧に蝕まれていってる。

「神威、ほんとに危険よ!ここは妖怪にはきついの!」

「わんちゃんは黙ってお留守番しときな〜」

「うるせー!!」

ほんとにこのバカは言うこと聞かない
蘭丸は私と凛丸を見て頷き、来た道を
帆を抱き抱えて戻っていく。


はあーとため息をついて
神威の後を追った。


「ねえ、無理しないでよ?」

「あぁ。」


やべえ…身体が重くなる。
風砕牙も騒いでやがる……

指先が痺れ出す

「クソっ、」

俺が側にいねえと誰が桔梗を守るんだよ
あんなよえっちー人間(凛丸)に任せられねえ

自分にムチを打って行くしかねえ

心配そうに横を歩く桔梗

ぜってー、俺が守る


「あのよ〜わんちゃん。」

後ろから呑気な声が聞こえて
「あぁ?!」
苛立つ神威

「ここは妖怪が入ってこれねーのに誰が襲ってくるんだよ?無理してまで来なくてもいんじゃね〜の」

「あ、」


「あ、?ってなによ…まさかあんた…」

気づいてなかったの???
このバカ…そこまでバカだったの???

神威の顔は段々に赤くなっていく
そりゃ私も凛丸も爆笑するわ

「てめーら…」
ぷるぷると神威の拳が震えだしたから
私と凛丸は笑うのをやめた。
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