愛されざかり~イジワル御曹司の目覚める独占欲~
13


こういうときに限って、藤堂先生とバッタリ会うなんてことはなく、一週間が過ぎた。

だから、日曜日にマンションのエレベーター前で偶然会った時にはだいぶ落ち着いて話ができたのではないかと思う。


「朝比奈。久しぶりだな」
「藤堂先生……」


藤堂先生はどこかに出かけるのか、エレベーターから降りてきて、私は買い物から帰ってきたところだった。
藤堂先生の顔を見たとたんに、胸がズキッと重く苦しくなったけど、露骨に顔に出したり態度に出さずに平静を装った私は女優にでも向いているのかもしれない。


「そうだ、朝比奈。食事に行く話だけど8月頃でも大丈夫か? 今、少し忙しくて」


申し訳なさそうに話す藤堂先生に俯きそうになる顔を堪える。


「別に無理に行かなくても良いんですよ」
「え?」
「絶対に行かなきゃいけないものでもないんですし。忘れてください」


微笑みながらするすると言葉が出てくる。
はっきりと考えていた絵わけではないけれど、なんとなく頭のなかにあったこと。
今更、一緒に食事などいけない。





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