愛されざかり~イジワル御曹司の目覚める独占欲~
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結局はこの場で答えなんて出るはずもなくて、私たちは「よく考えるように」と言われて帰路についた。
迎えに来た黒いスーツの部下が車で送ってくれる。


「篠原さんは、親父の元で働いていて不満はないんですか?」


真紀さんは運転席の部下の人に聞いた。篠原さんというのか。


「ないですよ。私は藤堂先生と共に研究に携われて光栄です」
「業務外のことをやらされても?」


暗にこのことを指しているとわかるが、篠原さんは苦笑した。


「それでも、私は藤堂先生を尊敬していますので」
「それは気の毒な話だな」
「私は真紀さんが羨ましいですよ。藤堂先生の息子として生まれ、医者としての才能もある。あなた程の人が本気になれば、新しい治療法や技術も生まれるでしょう。宝の持ち腐れだ」


穏やかな声なのに、言葉はなかなかの辛辣さを持っている。


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