恋を知らない
3 〈マンション〉

マリアにしがみつかれ、まるで大蛇に巻きつかれたような気分で、今夜の行為はクライマックスを終えた。

ぼくはマリアの横に倒れこみ、肩で大きく息をする。

もう仕事を終えたのだからさっさと離れてくれればいいのに、マリアはぼくの肩に頭をあずけ、ぼくの胸に指を這わせながら、じっとぼくを見つめている。

ぼくはもう口を開く気力もなく、暗い天井のクロスを見上げている。

やがてマリアはぼくの髪を撫で、ぼくのほほに軽くキスをした。そして、

「うふふふ」

何がおかしいのか、嬉しそうに笑いながらベッドからおりた。

天井にともる常夜灯のオレンジ色の光の下に、うしろを向いたマリアの裸身が浮かびあがる。細く、しかしくびれた曲線を持つ白い体。まるで美術の本から抜け出したような、均整のとれた体つきだ。

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