それでも僕は君を離さないⅢ
終業時刻前に社に戻った貴彦は

デスクワークをちんたらやって一向に進まないでいることには全く関心なく

スマホが光ったのを見逃さなかった。

「彼女からだ。」

一瞬目を閉じてメールを開いた。

「多田様、お疲れさまです。返信が遅くなりまして申し訳ありません。」と始まっていた。

いいんだよ、遅くても返信さえあれば。

貴彦は一度唾を飲み込んで先を読んだ。

「本日は朝から緊急対応にて終業となりました。当分多忙となります旨ご容赦願います。」

これはまるで他部門からの社内メールのようだと貴彦は眉間にしわを寄せた。

「業務上昼休みの時間も外出できませんので、併せてご了承をお願いいたします。また、週末は体力温存のため外出は控えております。お誘いは遠慮させていただきます。多田様も体調管理には充分お気をつけてください。立花。」

貴彦はスマホをデスクの上に置き

両手で顔を覆った。

「はぁー。」と長いため息しか出てこなかった。

頭の中では「くそ。」の二文字しか浮かばない。

今回も空振りか。

「どうしたらいいのかわからない。」

そう思いながらPC画面に向かい

途中だった事務処理を片付けるためキーボードをのろのろと打ち始めた。

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