それでも僕は君を離さないⅢ
「で?」

熱いコーヒーの香ばしい湯気が二人の鼻をくすぐった。

イケメン同士の密談といったところだ。

「何事もタイミングだと思う。」

「そりゃそうだ。」

「正直言ってきっかけがない。」

「じゃーさ、こういうのはどうだ?」

慎二は咲良の整った顔を見つめながら一策提案した。

「そんな危ないマネ、俺にはできない。」

咲良は慎二の提案に即答した。

慎二が言うには

彼女の前で派手にコケて印象づけろ。

というものだ。

しかもエスカレーターでだ。

運悪く彼女まで巻き込んで、上から転げ落ちたらと思うと足がすくむ。

咲良は首を横に振って慎二の整った顔を見返した。

超がつく程のイケメンと言えども、考えることはまるで子供のようだ。

普通に接すればいいものを、男は女の前だと格好をつけたがる生き物だ。

「慎二は運動神経がいいから加減できるだろうけど、俺は無理だ。」

「だけど、朝しかチャンスないだろ。」

「はぁー。」

咲良は慎二の言葉にため息で答えた。

それを見た慎二は救われないヤツだなと思いぷっと笑った。

咲良もどんくさい自分に左の頬だけでニタッと笑った。

二人はコーヒーの心地良い苦みを堪能した。

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