それでも僕は君を離さないⅢ
一方樹里は年度末を迎えるこれからの時期は多忙となる。

ステーキ・デートは流れたままだ。

恐らく貴彦も同様仕事に明け暮れた毎日だろうことはメールの文面からも察することができた。

先日ハーブティーを入れたボトルをダメにしてしまい、弁償してもらえることになった。

近藤さんは下の17階にいると言っていた。

そのうち連絡があるだろうくらいにしか頭になかった。

社長のタイトなスケジュールに細かなフォローをする合間にも、貴彦のことが気になり、仕事中何度もスマホの画面をちらちらと見た。

この数日は昼休みはメールがなかった。

いつもは朝と昼と夜の3回はメールがあった。

過労で倒れたのかもしれないといらぬ心配まですることに、樹里にとって貴彦の存在が少しずつ特別なものになりつつあることはわかっていた。

ただそれがどう特別なのかは気持ちに余裕がなく、今はまだ好きという言葉に直結するものとは思えなかった。

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