星降る夜空に祈りを込めて

「赤ちゃん綺麗にしてくるからね。先生、後産お願いします」
「あぁ、分かってる」


そうして、私は赤ちゃんを産湯につけ、綺麗にしておつむを付けると身体計測にうつる。


「頭囲33センチ、胸囲34センチ、身長49センチ、体重2980グラム」


母子手帳に記録をつけて、赤ちゃんをお包みにくるんでお母さんの元へ。


計測中も元気な声を響かせていた、可愛らしい男の子。
今は指をしゃぶって少し落ち着いたようだ。


「美希ちゃん、おめでとう。頑張ったね! 初産なのにすごい安産で、いいお産だったよ」


そう告げて、赤ちゃんを美希ちゃんのすぐそばの腕の中へと置く。


「あぁ、やっと逢えたね! 可愛い」
「あぁ、可愛いな」


太一さんも美希ちゃんも、ほんとうに幸せそう。


「後産と会陰の縫合も完了した。あとはもう一時間、このまま様子見で待機だな」
「そうですね。破水したと連絡が来た時はどうなる事かと一瞬ヒヤッとしましたが、初産なのにスピード出産で安産でしたね」


幸せな光景を見守るこちらも、心が暖かくなる。


こうしてクリスマスの夜中に産まれた赤ちゃんは、そのタイミングから聖夜の聖の字を取りアキラと名付けられた。


この出産が新たな風を運んできた。
夜明けの輝く星とともに。
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