星降る夜空に祈りを込めて

美希ちゃんと産まれた赤ちゃんが診療所で三日寝泊まりする間、私はその間ほぼ診療所に詰めた。
新生児と産後の母体の観察の為だ。


明日には退院となる夜。
私は数日振りに星空を見上げた。


そこには冬の冷たく澄んだ空気の中で、しっかりと輝くたくさん星が瞬いていた。


「佳苗」


その声に振り返れば、やはりというかそこには透悟さんがいた。


「ちゃんと着込め。寒いだろう?」


私のコートとマフラーを持ってきてくれた。
確かに冷えるので、ありがたく着込む。


「子どもが生まれる瞬間は、何度見ても感動するな」
「そうだね、毎回素敵よ。力強い産声は、そこにいる人を幸せにするわ」


そう答えた私に、透悟さんは目の前に来て目線を合わせてきた。


「佳苗。もう俺は間違えたくない。俺は俺の大切な人と、この先を一緒に過ごしたい。俺は佳苗が一番大切だ。どちらかが先に逝くまで、佳苗の隣にいる権利をくれないか? 結婚しよう」


紡がれた言葉の一つ一つに、私の心は震えている。
それは喜び。


「私も、貴方の隣にいられる権利が欲しい。よろしくお願いします」


今日ここで流した涙は、私がこの島で星空を見上げてきた中で初めての嬉し涙だった。
私の頬を両手で挟み、透悟さんはたくさんのキスを降らす。
額に、瞼に、頬に、鼻に、そして唇に。


たくさんのキスを降らせたあと、彼は私の耳元で囁いた。



「愛してる。ただ、ただ佳苗、君一人を」


少しのあいだ、私達は瞬く星空の下で互いを抱き締めていた。

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