桜色の雪が降る
彼女に届くようにこれを綴り、これは探しに行ける翼となる

プロローグ

第1話 プロローグ


現実の恋愛が上手くいかないからネットに逃げてきた。
現実の友人関係が難しいからネットに移り住んだ。

最初は自分の本当の姿を隠して他人を演じていた。自分の性格が悪いことなんて自分が一番よく知っている。
内気で不埒で優柔不断。
挙げれば数え切れないが、それら全てに鍵をかけて必死で彼女に媚びた。

ネットの掲示板で見つけた女の子。

春の空の様に透き通った声に、忽ち心は夏の炎天の如く火を灯した。
秋の鹿かと言われれば頷くだろう。
話す度に幸福という名の結晶が降り積もる。

僕は、顔も名前もわからない君に恋をした。

ネットの世界で恋愛感情を持てるのは豊かな心の持ち主だけだと思っていたが、そんなことは無かったようだ。
しかし、僕と同じように第一声から魅力を感じる人間がいるだろうか。

一目惚れならぬ、一言(ひとこと)惚れとでも名付けようか。

毎日話すようになり、遂には付き合えた。

幸せだ。

今日もこれからも彼女の発する声が音声情報としてスマホからスマホに繋がれて、僕の耳にようやく届く……。

はずだった。

誰かが歌った。
何故別れを迎えるために僕達は付き合うのだろうかと。

誰かが笑った。
好きな人とか、そうでない人でも、振り向かせようと試行錯誤している時が一番楽しいと。

そして、僕が思った。
今の彼女とはほとんど会わなくなったし、モテたいしもういいかな……と。

これはきっと、今まで僕がしてきたことの罰だ。

「どうせ別れるなら人と付き合う意味なんてないでしょ」

「分かるわ~、振り向かせる時が一番いいよね!特に両想いになってるのが分かってるけど付き合ってないってやつね!」

「もうさー、全然会わなくなったし他の人からアプローチ来てるしいいかなー……」

誰かが聞いていて、誰かが傷つく。
気がついた頃には女の子は僕から離れいた。

終いには、現在の彼女からの連絡も途絶えてしまった。

そうか、今度は僕の番なんだ。

そう悟った。

そして、彼女の捜索を開始した。
プライドを捨て、恥を忍んで、苦痛に耐えながら彼女を捜した。
学校にいる間も帰宅してからも頭の中は彼女一色。

しかし、彼女の失踪から丁度1週間が経過し、明日には埼玉まで赴こうと決意したその日、TwitteeのDMに1通の通知表示が着いた。

小雪 : おはよ。携帯壊れてた
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