一途な溺愛プリンスはベールアップを譲れない

突入

「見えました、あのマンションのようです」

 高級住宅街にそびえたつ、高層マンション。

 あの中に、宝来寺さんがいる……。


 麻生流司は、このあたり一帯を取り仕切る不動産王の御曹司だった。

 マンションのワンフロアを遊び場として所有し、たびたび『よくないお仲間』と『よくない遊び』をしていたらしい。

 警察にも目をつぶらせるほどの、権力と、金。


 ――知らなかった、そんなこと。

 穏やかで、優しくて、頼もしい彼の、裏の顔。

 ……いや、今となっては、どちらが裏の顔だったのかわからない。

 それでも私と一緒にいるときは、心から幸せそうに見えたのに。


 破られ、マジックで塗りつぶされた宝来寺さんの写真を思い浮かべる。

 どうか、どうか、宝来寺さんが無事でいますように……!


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