出られない51の部屋

45の部屋


「嫌」
「なんで、いいじゃん、別に」
 
ミケはニヤニヤしながら、私に「早くやってよ」と言う。
それに対して、私はずっと「嫌」と答える。
 
『どちらかが猫のものまねをしないと出られない部屋』
 
それが、正面の白い扉のスクリーンに書かれていた文字だ。
 
「別にさ、一言、ニャアって言うだけじゃん?」
「……」
そう言うミケは、心底楽しそうに、ニヤニヤしている。
「ミケがやればいいじゃん」
「俺? 俺さっきおんぶして疲れたし」
 
意味のわからないことを言うミケに、私はため息をついた。
これ以上この会話が続くのは時間の無駄だ。なら、さっさと終わらせよう。

そう思い、私はたった一言、口にした。
 「ニャア」
私がそう言った瞬間、扉の開く音と、ミケの笑い声が部屋に響いた。
 
こうなると思ったから、嫌だったのだ。
「ミケ、早く次」
「はいはいっ」

私はため息をつき、あれ、と気づく。
ハッと、勢いよく顔を上げると、不思議そうに首を傾げるミケ。

「ミ、ミケ」
「なに」
「……なんでも、ない」
「そう?」
 
いつから? 
ミケは、自分でも気づいていないのだろうか。
 
私は頭の中で、ミケとの記憶を巡らせていた。
 
いつから、いつからミケは……仮面を見せなくなった?
 
考えるうちに、私の口元は自然と上がる。
そして、思う。
 




ミケも変わったのだ、と。
 
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