恋はミステリー~会社編~
目の前にキラキラとした色とりどりのフルーツが乗ったパンケーキが運ばれてきた。

『わぁ!』

もちろんこの声は私ではない。

『おお』

こっちの野太い方が私。

『あ』

少し顔を赤らめた山下くんが恥ずかしそうに咳払いをしてその場を誤魔化そうとしていた。

『付き合ってくれてありがとねぇ』
『い、いえ、別に』

偶然にも山下くんと出会った場所は夜パンケーキで有名なお店の前で夕飯がてら連行したのだった。
来てくれないかなぁと思ったが咄嗟に目の前の店を指差したらしょうがないですねと満更でもない様子で前のめりについてきた。
なにこの可愛い生き物。

いつもより明らかに口角が上がっているが、私がいることを思い出しては顔を無表情に戻そうと頑張っている。
そんな彼の表情を見ているとこっちまでにやけてきてしまい、二人してまるで初デート中のカップルかと突っ込みたくなるくらいのハニカミ具合を見せていた。

目の前のきらきらフルーツパンケーキの他にスコーンやマカロン、小ぶりなケーキを乗せた夜のアフタヌーンティーセットもやってきて二人でさっそくシェアする。

乙女力の低い私でもこれはさすがにテンションが上がる。

『すごいね!可愛い!美味しそう!』
『そうですね!』
『私マカロンいただき』
『あ!じゃあ俺はパンケーキを!』

口の中でマカロンの甘味がふんわり溶けていく。
中にクリームが挟んで有るのだが甘過ぎず上品な味わいだった。

『うんまぁ~』
『こっちも美味しいですよ』
『まじまじ?』
『どうぞ』

山下くんがわざわざパンケーキを一口大にカットして小皿に取り分けてくれた。
シロップをかけフルーツもしっかり散りばめて小さなパンケーキの完成だ。

『わあ、ありがと』
『いえ』
『んーーー!』
『美味しいですか』
『ほっふんあ!』
『え?』
『んぐん…がってんだ!』
『ああ』

せっかく食べやすく切り分けてくれたのに一気に頬張りすぎて口を膨らませながら強引に喋る。
いつもはほとんど会話が弾まない、いや弾ませようとしていない山下くんが積極的に会話をしてくれるのがなんだか嬉しかった。

『口開けて』
『へ?』
『これ食べてみ!ほい』
『あが』

マカロンを山下くんの口に突っ込む。

『んーー!』
『せやろせやろ、うまかろうて』

山下くんが目をキラキラさせてコクコクと頷いた。
とんだミステリアスボーイだな、きみは。

周囲からコソコソとあそこのカップルラブラブだね~なんて声が聞こえてきたが、満更でもない私だ。
年下のイケメンとカップルに間違えられるなんてなんのご褒美なの。

さすがのマイペース山下くんは周囲の声など耳に入らないようで目の前のスイーツに夢中のようだった。
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