赤薔薇の騎士公爵は、孤独なカヴァネスに愛を誓う
「国王陛下、公にはなってはいませんが前王陛下は大公殿下の息がかかったかつての騎士公爵であるルゴーンに毒殺されました」
「なっ……んだと?」
「それは今回、陛下を陥れた手口と類似しています。おそらく王位と前王妃様を狙ったものといえましょう」
「母様が狙われるのはなぜだ」
「恋愛感情ですね、おそらく」
それを聞いたアルファスは、信じらないといった様子で顔面を蒼白させる。
兄の妻であり、ましてや国王の妃にそのような感情を抱くなど許されないことだ。動揺するのも、無理はない。
「状況は理解した……その、母様は無事なのか?」
「はい、今はずいぶん体調も落ち着いていると侍女からは聞いています。ただ、自分のせいで息子に嫌疑がかけられていると知り、また部屋に籠られてしまっています」
「そうか……でも、母様が無事でよかった」
自分のせいだと思っていたのはアルファスも同じだったのだろう。大公殿下の差し金だったとはいえ、実際に毒が塗られた薔薇を手渡したのはアルファス自身だったのだから。
険しい眉が少し解けたアルファスに、シェリーも笑みを浮かべて声をかける。
「よかったですね、アルファス様」
そう言って彼の手を握れば、アルファスも表情を和らげてコクリと首を縦に振った。
「それで、今日俺がここに来たのはですね、前王の死を心臓発作と診断した医師を見つけたからなんですよ」
ウォンシャー公爵はそう言うと、一枚の紙を取り出す。
そこには【トルメキ産赤ワイン十五本】とその金額が明記されており、領収書のようなものだとわかった。
「元王医であるこの男は、うちの所有するワイナリーのワインをたいそう気に入っておりましてね。よく邸まで届けさせているんですよ。だから住所の入手は簡単でした」
「この男は前国王の死後、すぐに辞職しているな」
向かいの席から領収書をのぞき込むスヴェンは、元王医の名前であろう【メドレス・パルミーダ】の文字を睨むように見る。