赤薔薇の騎士公爵は、孤独なカヴァネスに愛を誓う


 即位式にも使われた城下町の大聖堂には、祝福の鐘と薔薇の花びらが舞い散る。

国王のアルファスと三人の公爵、スヴェンの縁者たちに見守られてふたりの式は厳かに執り行われた。


 今日からシェリー・セントファイフになる喜びを噛みしめながら、真紅のベルベット絨毯の上を歩いていくと祭壇前にいるスヴェンはが手を差し伸べてくる。


「今日のシェリーは一段と美しいな」


 シェリーの純白のドレスは、肌触りが良く光沢のあるシルク素材でできており、瞳の色と同じブルーゾーサイトの宝石があしらわれた首飾りとイヤリングを身に着けていた。


「スヴェン様も婚礼衣装、とても似合っています」


 彼が着ているのは、セントファイフ家の由緒正しき白の軍服。襟や袖口にはスヴェンの髪色と同じ赤のラインが入っており、金糸の刺繍に縁どられている。

その腰にはセントファイフ家の家紋と薔薇のモチーフがつけられた剣が差さっていた。

 差し出された手をとり、共に司祭の前に並ぶ。


「汝スヴェン・セントファイフは、シェリー・ローズを妻とし、健やかなるときも病めるときも、富めるときも貧しきときも、死が愛を分かつまで愛し合うと誓いますか?」

「この命朽ち果てるその日まで、愛し守り抜くと誓おう」


 一瞬、スヴェンは司祭ではなくシェリーを見た。

その視線に気づいたシェリーは、胸がいっぱいになって目に涙をためる。まるで神にではなくお前に誓うと言われているようで、心の奥から揺り動かされるような感動を感じた。



「汝スヴェン・セントファイフは、シェリー・ローズを妻とし、健やかなるときも病めるときも、富めるときも貧しきときも、死が愛を分かつまで愛し合うと誓いますか?」

「はい、この命尽きるまで彼を愛し、支えると誓います」


 司祭の言葉には、シェリーもスヴェンを見つめながら誓った。満足げに目を細めるスヴェンに笑みを返して、お互いに向き合う。


「それでは、誓いのキスを」


 司祭からのお許しが出て、待ち遠しかったとばかりにスヴェンが指で唇に触れてくる。

そのまま手を滑らせるようにシェリーの頬に手を添えると、そっと顔を近づけてきた。


「愛している」

「私も愛しています」


 そっと目を閉じれば、優しく唇が重なる。祝福の鐘や拍手の音を聞きながら、シェリーは愛する人を受け入れた。


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