赤薔薇の騎士公爵は、孤独なカヴァネスに愛を誓う
「このことを、アルファス様は……」
「聡明なお前には、もう隠せないのだろうな。……病死だと思っている。とてもじゃないが、本当のことなど話せない」
「そう、でしたか……」
「それに、毒殺と疑っているのは議会でも俺を含む三人だけで、大公様とノーデンロックス公爵は医者の言う病死という診断を信じている。しかし、前王の死は不明点が多すぎる」
難しい顔をして、スヴェンは隣に腰掛けた。
その顔には疲弊からか影が落ちており、心配になったシェリーは膝に置かれている彼の手に自分の手を重ねた。
「シェリー?」
スヴェンは問うような視線をこちらに向けてくる。
「思い詰めていても、いい考えは浮かばないものです」
ふわりと笑いかければ、彼の顔も和らいでいく。
「お前の言う通りだな、礼を言う」
見つめ合って、笑みを交わしたときだった。
「もうっ、いつまで待たせるんだよ!」
口をへの字にしたアルファスが側にやってくる。
(そうだわ。元はといえばアルファス様の稽古に来ていたのに、私ったらスヴェン様とすっかり話し込んでしまって……)
唇を尖らせるアルファスに深々と頭を下げた。
「申し訳ありません」
「もう部屋に帰る! シェリー、残りの勉強をやるぞ」
完全にへそを曲げてしまった彼に「はい」と苦笑交じりに答え、ベンチから立ち上がる。
「俺は騎士たちへの伝達事項が残っているから、残らせてもらう」
「それでは、失礼します」
訓練場に残るスヴェンに一礼をして、背を向ける。
アルファスと部屋に向かって歩き出したのだが、ふと思い詰めていた彼の表情が脳裏に浮かんだ。
心配になって立ち止まり、ベンチに座ったままのスヴェンを振り返ると我慢できずに声をかけた。