恋?…私次第。~好きなのは私なんです~
・それが降りかかる火の粉なら…払わなければ

「ごめん」

「え?」

「店で君の事を仕事関係だと言った」

「私は別に」

それで良かった。特に異論はない。

「別に、か…」

「え?」

「…いや」


女将さんに機嫌よく見送られ、今は車の中に居た。
上手く収まったのだと思う。これからだって高守さんはあのお店に行くだろうし。変に嫉妬を買うような話をする必要はない。

「縁があると思った?」

「え?何にですか?…」

「ん?その…、若い男性に。一度会って、偶然また会ったら、縁があるんじゃないかって普通思わない?女の人はそういう事に運命的なモノを感じるものでしょ?例え会いたくても、中々、そんな風に会うものではないからね」

「あー、そうですね。言われてみれば、ですね。彼の事は、何も、考えても見ませんでしたと言いました。だから縁なんて事まで思いつきもしなかったです」

最初から…無意識にって言うのも可笑しいけど、かなり年下の男性は対象外だと思っているからだろう。

「全く恋のアンテナは立ってないんだね」

「え?…あー、だと思います。鈍ってますね。鈍いとはちょっと違うのかな…。偶然が重なるって、何か縁かもって、そういう風に思う事も忘れてました。…駄目ですね」

今、別に恋がしたいなんて思ってないからだ。それに、自分より若い男性になんて…あり得ない。

「いや、いいと思うよ?…まあ、…そういう感情、すっかり忘れてしまうって言うのも困るけど」

それって…あの若い子には恋心を抱かなくていいと思う、って事だ…多分。

「帰りたい?」

え?急に何?

「少しドライブしてもいい?」

あ、そういう事か。

「私の部屋までお願いします」

あ、どこまで行こうと最終的にはって事で、都合よく取られがちな言い方になってしまった。

「遠回りしてもいい?最終的には逢坂さんのところに帰るから」

あ、んー、…やっぱり、そう返されちゃうよね。

「これ以上粘ったら嫌われるかな?」

「部屋に着くまでなら、まだもう少し話せます」

真っ直ぐ送ってくださいって、言い方をすれば済むのに。ドライブしたいって事はまだ話がしたいって事だろうと思った。どこかに行く?と言われた訳じゃない。

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