私達の狂った歯車

第4章

気が付いたらうちは、病院のベットにおった。
隣のベットには、数人が泣いとった。
『・・・何で泣いとんの?』
うちは起き上がり、彼らの方に向けて聞いた。
彼らは一瞬驚いた顔をした。

『アンタのッ・・・!』
水色の彼がうちにそう叫ぶ。
それを赤色の彼女は片手で制する。
『いや、何でも無いの』
赤色の彼女は笑う。
泣きながら笑う。
うちはその姿に息を飲んだ。
とても美しかったからや。

『名前は?』
黒色の彼が、うちにそう聞く。
『姫莉、麻生姫莉やお!よろしく!!』
そう、出来るだけ明るく答えた。

『・・・ここ病院なんだけど。』
緑色の彼が、不機嫌そうにうちを睨む。
しまった。
失敗した。
そもそも、この病室には他にも患者がいるんや。
何を大きな声で言っとるんやろう。

『ねえ、何で“よろしく”なの?僕達は今までも、これからも、アンタとは関わる事が無いと思うんだけど。』
水色の彼がうちにそう、冷たく言い放つ。
確かにそうや。
今まで何の共通点も無かった知らない人から急に、“よろしく”って言われたって、どうしようも無い。
うちはそんなことまで頭が回らんかった。

彼らの制服を見ればすぐに分かったのに・・・。
水色のカッターシャツに、白いカーディガン。
黒のチェックのリボンとネクタイ。
白い線が入った黒いスカートに、柄の無い黒いズボン。

彼らは私立桜蘭学園の生徒や。

それに、彼らのカーディガンにはクラスが彫られとる、金色のバッチが付けられとった。
バッチにはS・Aと彫られとる。
1番上のクラスや。
歳は同じくらいやから、中3やろう。
彼らはうちと同じ歳て、うちの憧れていた学園におる。
しかも最上級のクラスや。
うちがどんなに頑張っても、半年ぐらいしかおれんのに、彼らは頑張らんくても、入る事が許されてとる。

お金持ちの彼らと貧乏なうちは、一生関わる事が無い。
なのに“よろしく”とは、実に考えの無いバカな発言やった。
つくづく、うちはバカや。
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