キミに嘘を吐く日
「宇野くんの名前って……」

「やっぱり気づいてなかったのかよ」


呆れたような宇野くんの声に、RINEの名前と宇野くんの顔を何度も交互に見た。

宇野くんの名前……宇野 色葉。


「同じ、名前だったの?」

「正直、俺は自分の名前、女みたいで好きじゃない。だから、学校でも絶対名前で呼ばせねーからさ、気付かなくても仕方ねーけど。やっぱり薄情だよな、いろはは」

「ごめん……でも、いろはって名前本当にキライなの?」


私は、自分の名前は嫌いじゃない。

いろはって響きが好きだから。

いろはは、色葉。

春の桜と秋の紅葉を示すもの。

いずれも、その季節の代名詞ともなり心を潤し癒してくれるもの。

自分の名前にそんな素敵な景色が隠れているのだと、幼い頃に聞かされて以来、私は自分の名前が好き。

でも、それは宇野くんにとっては違うのかもしれないって思ったら、少し寂しく思えてしまった。


「キライ……じゃないよ、今は」


今は。

その言葉にホッとした。

だって、私の名前を呼ぶたびに嫌な気分にさせるなんて、辛いもの。


「キライなら、いろはの事だって呼べないだろう。……それはすごく嫌だ。だから、俺の名前といろはの名前は違うものだって思うことにしてる」


違う、もの。

なんだろう?急に突き放された気がした。

同じ名前ってことが、特別感を与えてくれたのに、それは大したことじゃないと否定された気持ちになった。


「わ、私は宇野くんとの繋がりができたみたいで嬉しいよ?宇野くんと同じ名前だったことがすごく嬉しい」

「そっか」


そうか、と言いながらも彼はそれ以上名前の話には触れずに帰って行ってしまった。

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