キミに嘘を吐く日
「俺さ、デートしたのも、誰かとお揃いのストラップとかつけるのも初めて」


展望台から海を見ながら、隣にいる宇野くんがボソッとこぼした。

独り言みたいだけど、私の耳にもちゃんと届いたから、私も彼に答えた。


「私も、初めて。相手が宇野くんで、すごく嬉しい」


素直な気持ちを口にするのって、すごく恥ずかしいし、抵抗があるとおもっていたけど、今は言いたい。この気持ちを口にしないと、消えて無くなってしまうような気がして。

宇野くんの手をキュッと力を込めて握った。

宇野くんも握り返してくれて、お互いがお互いをジッと見つめた。

好きという気持ちが溢れてきて、止まらなかった。

止めるつもりもなくて……。


「宇野くん」

「ん?」


優しく見つめられて、本当ならすごくドキドキして緊張するはずなのに、今は何故かとても穏やかな気持ちだった。

まるで今目の前に見えている凪いだ海の様に。


「わたし、宇野くんのことが……好きです」


初めて感じた恋心。

宇野くんと話す様になってまだ少しの時間しか経っていない。

入学してから1年間同じクラスでいた時は、なんとも思っていなかったし、視界にだって入ってなかった。

それは、私が見ようとしていなかったからだけど。

これからはずっと見ていたい。

できることならば、隣でこんな風に。

ねえ、宇野くん。それを望むのはわがままですか?

私の告白に一瞬驚いた表情をしたけれど、直後、私は宇野くんの広い胸の中に抱きしめられていた。


「いろは、好きだよ。俺も、ずっとずっと好きだった」


宇野くんの声は泣き出しそうなほど切ない響きを含んでいた。

どうして?

なんでそんな苦しそうな声で言うの?

宇野くんの告白は何よりも幸せな言葉のはずなのに、私まで泣きたくなってしまった。



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