エリート上司の甘く危険な独占欲
 麻衣の声を聞いて穏やかな笑顔で振り返った柊一郎だったが、麻衣の隣に華奈の姿を見つけて、一瞬表情が固まった。だが、すぐに表情を和らげる。

「おはよう」

 そんな柊一郎の変化に気づくことなく、麻衣は華奈とともにエレベーターに乗り込んだ。九人乗りのエレベーターに定員が乗り込んだが、混んでいるおかげで柊一郎の隣にならずにすんだ。

 内心ホッとする華奈に、麻衣がニコニコしながら話しかける。

「今日もいい天気ですね~。おしゃれが楽しくなっちゃいますね」
「そ、うだね」

 華奈は麻衣が春らしい淡いピンク色のシフォンブラウスを着ていることに気づいた。一度喉を湿らせてから、口を開く。

「それ、かわいいね。春らしくてステキ。麻衣ちゃん、ピンクが似合うね」
「わー、ありがとうございます~! 実はこれ、彼氏と一緒に買い物に行ったときに買ったんです!」
「買ったの? 買ってくれたんじゃなく?」

 華奈が微笑みながら言うと、麻衣がポッと頬を染めた。

「えへ。実はそうなんです~」

 麻衣は嬉しそうに身をよじらせた。柔らかくパーマをかけたセミロングヘアが肩で揺れて愛らしい。

 そんなことを思ってぼんやりしていたからか、麻衣の言葉を聞き逃してしまった。
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