口づけは秘蜜の味
彼の秘密
ことの始まりは昨日だった


雨が続いた春の長雨のあと…
久しぶりに晴れた日の残業もない就業後

何となく足取りも軽く
帰りに映画でも観てきちゃおうかなぁ?
なんて思いながら街を歩いていたら

幼馴染のシンヤから突然電話が掛かってきた

「悪い!代わりに行ってくれないか?舞花!」

「どうしたの?」

「サヤが倒れて運ばれたんだけど、オレ今出張中で…予定より前の飛行機はいっぱいだし……すぐには行けないんだ…悪いけど代わりに病院に行ってもらえないか?」

「わかった、詳しく教えて!」

シンヤから聞き出して急いで病院に駆けつけると

サヤがベッドの上に青白い顔で横たわっていた

「大丈夫?サヤ…」

「ごめんね舞花……シンちゃん大袈裟で…」

大袈裟というけれど身寄りのないサヤを心配するのは旦那として当然だろうと思う

「気にしないで?と、言うか頼ってよ友だちでしょ!」

「有難う」

「で、大丈夫なの?」

サヤに聞くと恥ずかしそうに下を向いた

「あのね……デキたみたい…だからその…ホントにごめんなさい」

仕事帰りに駅で倒れ

極度の貧血状態でここに運ばれたのだけれど、調べたら妊娠していたのだそうだ

「めでたいことじゃない!
病気とかじゃなくて良かった!」

大切な友だちで、大事な幼馴染のもうすぐ奥さんになる人の嬉しい知らせだから…私も嬉しい

かつては好きな人だった…初恋のシンヤ
いつか振り向いてほしいなと、思っていたけれど

そのシンヤが選んだのは私ではなく

…私の友人の可愛いサヤだった

付き合うと聞いた時は泣いたけれど……
その後結婚するのだと聞いても辛くなかった

今はただの幼馴染…
心から良かったねと、二人を祝福できているのだ

それは…今はもう吹っ切れたからだろう

仕事に生きるのだと決めたから
< 7 / 49 >

この作品をシェア

pagetop