恋にはならないわたしたち


酔ってはいるものの、妙に意識は冴え渡り、目をつぶったまま聞き耳をたてる。


「親が気に入った相手と結婚するっていうのはお前らと変わらへんやろ」


苦笑混じりで切り返す三池。


「親が気に入る相手のスペックがオレらとは違うよ。きっと生粋のどこぞのお嬢様やろ」


「せやな、少なくても飲み潰れて居酒屋で寝たりする女ではない」


今の声は崎田だな。
アイツ、いつかコロス。


フワリとテーブルに突っ伏す瑞穂の肩に誰かのジャケットがかけられる。


鼻先に嗅ぎなれた男性用コロン。


「三池〜、真木にそんな気遣い無用やぞ。オレらより丈夫やし」


その場にいた全員が一斉に笑った。




自分の扱いなんてこんなもんだ。
男ばかりの飲み会にも平気で誘われ、潰されて、笑われて。



おまけに入行以来1年半、密かに持っていた三池への好意もへし折られた。



三池のアホ。



無駄に色気を漏らすな。

不用意に笑いかけんな。

思い出したように優しくすんな。





銀行の同期の女の子、先輩、後輩に至るまで、そこそこの人数が三池に告白をしていると噂で聞いている。
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