冷たい君の不器用な仮面

君の姿

私は家への帰り道を、1人でトボトボと歩く。




さっきの出来事があったせいか、まだ意識がはっきりとしていない。



あの後、1人その場に残された私は、成瀬の大量の血をどうしようかと1人でオロオロしていた。




すると、何人かのスーツを来た背の高い男性たちが、私の目の前にやってきた。




私は素直にビビり、後ろに後ずさる。



すると、1人の男性が私を見ながら口を開いた。



「成瀬様を助けていただいたお方でしょうか?」


男性は丁寧な口調で私に話しかける。



「えっ、あ、はい」



私は戸惑いながらも、こくんと頷く。



するとそこにいた人たち全員が、バッと一斉に頭を下げた。



私はびっくりして、より後ろへと後ずさる。



「誠にありがとうございました!」



……なんだこの状況。




いくら路地裏で人気がないとはいえ、何人かの人は通るし、何より目立つ。



「ちょっ頭あげてください!」



私は少し焦りながら、男の人たちに声をかける。



すると急にババっと頭をあげた。




……なんていうかこの人たち、激しいな……




「では、我々はこれからここを清掃いたしますので、あなた様をお送りします。」




男の人はハキハキとした口調で、車を指差す。




え、送る?



いやいやいや、いいですよ!



ぜんっぜん遠くないし街灯もあるから暗くないし!




というか、そんなの申し訳なさすぎる!




ただ偶然通りかかって家に電話かけただけだし。




「大丈夫ですから!ありがとうございます!じゃあ!」



私はくるっと体の向きを変えて、逃げるようにしてその場から去った。





……そして、今にいたる。





……そして、私は後悔をしている。




の、乗せて貰えばよかった……




……だって、私今血まみれなんだもん。



さっき気づいたんだけど、そういえば成瀬を抱きかかえたり、血のついた地面に膝をつけたりしていたんだった。



そのおかげで、私の服もズボンも血がついてる。




それを気遣って、さっきの男性は送ると言ってくれたのかもしれない。





わーん、失敗した。



まあ、グダグダいてってもしょうがない。




早めに帰ろっと!




私は足早に帰り道を歩いた。

< 2 / 298 >

この作品をシェア

pagetop