冷たい君の不器用な仮面





ヒュウッ










冷たい夜風が、私の体を吹き抜ける。










すっかり暗くなった辺りは、いつものにぎやかな雰囲気と違って何だかひっそりとしていて。











急に、心細くなった。










私はブンブンと頭を振り払い、周りを見渡す。











……さっきの音は、どこで鳴ったんだろう









ガラスのような、ビンのような硬いものが割れたような音だった。








私は足音を立てないように、静かに足を忍ばせながら店周辺を歩く。









…………誰も、いないな……










私は周囲に誰もいないことを確かめると、一度足を止め、ふうっと深呼吸した。











……緊張で、心臓がどうにかなってしまいそうだ。












さっきからドックンドックンと大きく波打っている心臓の鼓動は、一向におさまらなくて。









足音よりも、心臓の音の方が気になるくらいだ。









私はグッと拳を握りしめ、一息ついてからまた歩き出す。










……また、路地裏…とかにいるのかな……?








1ヶ月前にあった路地裏での出来事の記憶がもう一度、頭に浮かんだ。









私は店から少し離れたところにある、ビルとコンビニの隙間の路地裏に目を向ける。











あれから何の音もしないが、あの大きな音はバーからそう遠くない場所からした音だと思う。










店からの距離を考えても、あそこにレイたちがいる可能性は大いにある。










私は、その路地裏に向かってゆっくりと歩き出した。










…………マスターを待とう、とも一瞬思った。









が、そんな余裕は今の私にはない。










それよりも、レイやユウたちが心配でしょうがなかった。
















私はある程度路地裏に近づくと、ふっと息をこぼし、体の力を抜く。









そして息を潜め、意を決して路地裏を覗き込んだ。























瞬間



















ーーー…ガバッッ



















後ろから誰かに体を押さえられ、私は身動きができなくなった。










「……なっ…?!」










私は突然のことにパニックになりながらも、抵抗しようと手足をばたつかせる。











すると、いきなり口元に白い布を当てられ息ができなくなった。









その瞬間、強いめまいがして私はガクッと崩れ落ちる。










……何が…起こったんだろう……











私は……捕まってしまったの……?











『おい捕まえたぞ!』と言う声がぼんやりと耳に入り、やっぱり捕まってしまったんだ…と改めて思う。










……やっぱり…マスターを待つべきだった








私は今さらながらひどく後悔した。










結局、私はこうやってレイたちに迷惑をかけてしまうんだ。







分かってたのに。









私が、無力だってことくらい。









……私は、なんて馬鹿なんだろう……












だんだんと薄れていく意識の中、私はぼんやりとレイたちの姿を思い浮かべる。












……ごめん。レイ、ユウ、マスター…













心の中で深く謝った瞬間、誰かが私を呼ぶ声が聞こえたような気がした。













……でも





















……私の意識はそこで途切れた。

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