私のご主人様Ⅴ(SS?投稿しました)

「お嬢様、お電話が」

不意に背後からかけられた声に肩が跳ねる。

「たな…」

「お嬢様、こちらへ」

思わず呼び掛けた私の言葉を遮るように言葉を重ねた田部さんは、有無を言わさないように会場の隅を見る。

季龍さんを一瞬見たけど、再度田部さんに呼ばれて季龍さんから離れる。

「田部さん、あの…」

「旦那様です。出ていただけますか?」

会場の隅に来た途端差し出されたスマホを受け取る。とりあえず出てみると、源之助さんの優しい声がした。

『琴葉ちゃん、楽しんでるかい?』

「た、楽しむところじゃないですよ」

『ハハッ確かにそうじゃな』

そんな楽しそうに言われても困るよ…。

『琴葉ちゃん、会えば必ず分かる。分かるまでそこにいてほしい。キミの記憶のカギはすぐ近くにいる』

「記憶の、カギ…」

「こと、ちゃん?」

聞き覚えのある声に引き寄せられるように振り返る。

桜色のドレスに身を包んだ彼女は、学校での姿よりずっと大人っぽくて、令嬢であったことを思い出させる。
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